SNSの現在と展望
本論文は非公式バージョンです。学術論文へ引用される場合には、必ず「情報処理」2006年9月号掲載の論文をご参照ください。(大向一輝: SNSの現在と展望 -コミュニケーションツールから情報流通の基盤へ-, 情報処理, Vol.47, No.9, pp.993-1000, 2006.)
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SNSの現在と展望 -コミュニケーションツールから情報流通の基盤へ-
Current Status and Future Perspectives of Social Networking Services
大向 一輝
Ikki Ohmukai
国立情報学研究所 / 総合研究大学院大学
National Institute of Informatics / The Graduate University for Advanced Studies
1. はじめに
近年、家庭向けブロードバンドやインターネット接続可能な携帯電話の普及によって、Webのユーザ数が飛躍的に増加している。これにともなって、Webは情報収集のためだけではなく、個人間のコミュニケーションの場として利用されるようになってきた。
Web上でのコミュニケーション手段として、すでに普及が進んでいる電子掲示板システム(BBS)やブログ(Weblog)[1]に次いで、利用者が急増しているのがソーシャルネットワーキングサービス(SNS)である。SNSは、会員制のコミュニティサイトの一種である。SNSでは、参加者がそれぞれに固有のページを持ち、他の参加者と相互にリンクすることで小規模のコミュニティを形成する。コミュニケーションはその内部でのみ行われるため、不特定多数に情報が公開されるBBSやブログとは異なる密接なコミュニケーションが可能になる。
SNSは海外で誕生したサービスであるが、国内でも普及が進み、国内最大のSNSは600万人以上の会員を得ている。また、既存の情報サービスとSNSが融合した例も数多い。
SNSは、旧来のWebサイトやBBSと異なり、参加者の同一性を特定しやすいため、コミュニケーション分析の研究対象として注目を集めている。また、SNS上では大規模な社会ネットワークが形成されるため、ネットワーク分析手法を適用することで新たな知見が得られる可能性がある。
本稿では、SNSの発祥から現在に至るまでの変遷について述べた上で、研究対象としてのSNSの位置づけについて議論し、今後の課題や展望について述べる。
2. SNSとは
2.1. Webコミュニケーションの変化
ネットワークを利用したコミュニケーション手段としては、古くから会員制パソコン通信におけるBBS・フォーラムや、インターネットにおけるUsenet・ニュースグループといったシステムがある。これらのシステムでは、カテゴリ分けされたテーマごとに議論の場が設けられ、参加者は各自の興味に沿ってそれぞれの場にメッセージを投稿する。特定のトピックに関する一連のメッセージの集合はスレッドと呼ばれ、コミュニケーションの履歴はこのスレッドごとに管理される。
Webにおけるトピック指向のコミュニケーションシステムとしては、パソコン通信と同様のBBSや、コミュニティサイトと呼ばれる会員制のものがある。また、メーリングリストは電子メールを利用したスレッド指向コミュニケーションであるといえる。
トピック指向コミュニケーションシステムは、トピックに対してメッセージを投稿するだけでそのコミュニティに参加できるため、参加に対する敷居が低い。また、議論の内容が重要であるため、投稿者の記名性が問題にされないことも多い。この特徴を積極的に活用した大規模コミュニティが、匿名BBSの集合体ともいえる「2ちゃんねる」である。また、米国ではオンライン上のクラシファイド(個人向け3行広告)サービスである「craigslist」による情報交換が盛んである。
その反面、トピック指向コミュニケーションにおいては、投稿者の存在が見えにくい。あるスレッドにおける特定の投稿者が、他にどのようなトピックに興味を持ち、投稿しているかを知ることは極めて難しい。
SNSは、日常的なコミュニケーションの支援を目的として、コミュニケーション主体である個人の存在を明示化し、個人間の情報流通を実現するためのシステムであると定義できる。本稿では、このようなコミュニケーションの形態を個人指向コミュニケーションと呼ぶこととする。
代表的なSNSである「mixi」のスナップショットを図1に示す。SNSの各参加者は、サービス上で自分のページが与えられ、プロフィールや日記など、自身に関する情報を掲載する。他の参加者の情報を閲覧するためには、その参加者と知人関係を構築する必要がある。多くのSNSでは、相互承認を行うことで知人関係が成立する。自身の情報は、原則として知人のみに公開されるが、間接的な知人への公開や、SNSの参加者全員に公開するなどの制御が可能である。関係を構築した知人の情報は制御の結果に応じてすべて自分のページに集約されるため、周囲の情報を容易に得ることができる。
知人関係に基づく情報の発信・受信に加えて、トピック指向のコミュニケーション機能を備えるSNSもある。ここでは、トピックはコミュニティと呼ばれ、コミュニティごとにBBSが設置されている。各コミュニティには、参加者のリストが表示され、各自のページとリンクされるため、一般のBBSのような匿名性はない。
SNSの形態に近いコミュニティサイトとしては、企業・大学といった所属組織ごとのコミュニティサイトがある。このようなサイトでは、組織内のコミュニケーションの活性化が目的であるため、話題・トピックを限定せず、各参加者の存在を可視化する機能を持つものが多い。その点で、SNSは組織内コミュニティサイトをWeb全体に拡張したものであると考えることもできる。
2.2. SNSの歴史
個人指向のコミュニティサイトがSNSと呼ばれるようになったのは、2003年に米国で開設された「Friendster」が最初であるとされている。Friendsterは急速にユーザを獲得し、開設後3ヶ月で100万人に達したことから注目されるようになった。その後、Googleによる「Orkut」が人気を集め、2004年の初頭には日本のユーザにも知られるようになった。同時期に、米国ではSNSを利用してジョブマッチングを行う「LinkedIn」など、多様なサービスが展開されるようになった。
日本では、2004年2月に「GREE」および「mixi」が開設され、米国と同様に普及している。国内最大手のmixiは、2006年12月現在で670万ユーザを獲得している。
SNSの普及は全世界的に進行しており、世界最大のSNSである「MySpace」の会員数は1億1,000万人を超え、1日あたり25万人の新規登録がある。他にも、大学生向けSNSの「Facebook」やMicrosoftが運営する「Wallop」など、ユーザ数が1,000万を超すSNSがいくつか存在する。これらは英語でのサービスであるため、参加者の国籍・居住地は多種多様であるが、韓国のSNS「CyWorld」は韓国語圏でのサービスながら1,300万ユーザを抱えており、韓国の総人口の30%程度、20代の女性の95%が参加しているといわれている。
利用者数の統計としては、米Nielsen//NetRatingsによる2006年4月の全世界の利用者数が6億8800万人、総務省による日本国内の利用者数が716万人という数字がある。
このように、SNSは急速に普及しており、認知度が高まるにつれて類似サービスが続々と登場している。SNSの最新事例の詳細は、「ソーシャルネットワーキング.jp」に掲載されている。現在では、既存のサービスとSNSの機能を統合したサービスが多く、どのサービスがSNSであるのかを明確に区別することが難しくなっている。当初はSNSの定義として、すでに参加しているユーザからの招待が必要(招待制)、というものがあったが、現在では多くのサービスが登録制になっている。
例えば、ブログとの統合では、友人関係を定義した上で、ブログ記事のそれぞれについて公開・非公開をコントロールすることが可能な「LiveJournal」が広く普及している。また、ブックマーク共有の「del.icio.us」、画像共有の「Flickr」、動画共有の「YouTube」などのサービスにおいても、SNSとしての機能を一部備えている。
また、話題・トピック限定のSNSや、地域限定のSNSなど、ユーザの範囲を限定したSNSも数多い。後者の例として、熊本県八代市による「ごろっとやっちろ」を筆頭に、行政主導のサービス展開が模索されている。
コミュニケーション手段としてのSNS以外に、他の用途にユーザ間の社会関係を導入する動きもある。「Rojo」では、RSSリーダーとSNSを統合することで、大量の記事の中から知人が興味を持っているものを優先的に表示させるなど、検索・推薦の手段としてSNSを利用している。
3. SNS研究の現状
SNSでは、個々の参加者のふるまいだけでなく、参加者間のつながりの総体としての大規模ネットワークを観察することができる。この特徴を利用して、工学やコンピュータ科学のみならず、社会学や心理学、物理学のアプローチを用いた研究が進められている。
本章では、これらの研究をコミュニケーション分析、社会ネットワーク分析、および情報・知識共有の3つの観点に基づいて分類し、紹介する。また、研究者に特化したSNSの構築・運用例について取り上げる。
3.1. コミュニケーション分析
SNSに関する代表的な研究のひとつとして、社会学ならびに心理学の観点からSNSにおけるコミュニケーションの特性を明らかにするものがある。川浦らは、mixiの参加者に対してアンケートを行い、SNS利用の目的(日記・コミュニティ)、実名・顔写真の公開の有無とコミュニケーション指向との関連を調査している[2]。これによれば、日記すなわち知人とのコミュニケーションを主に利用するとの回答が80%にのぼり、mixiが記名制のBBSとは異なった利用のされ方をしていることがわかる。また、実名・顔写真の公開の有無については、それぞれを公開している参加者ほど新たな他者とのコミュニケーションを求め、非公開であるほど現実の知人関係でのコミュニケーションを求めている傾向が明確になっている。また、同じアンケート調査から性別・年代別の利用者意識を抽出する研究もある。ただし、これらの研究は2005年3月時点(会員数約40万人)のアンケートに基づいており、その後の参加者層と傾向が異なっている可能性があるため、継続的な調査が必要であると思われる。
海外の研究事例では、英語で提供されているSNSにおいて、参加者の国籍あるいは国民性とふるまいの特性との関連を調査した研究がある。この研究では、参加者同士が知人関係を成立させるにあたり、事前にどの程度のコミュニケーションがあったかを参加者の国籍ごとに分類して議論している。SNSの使われ方には背景となる文化による違いが存在すると思われるため、こういった比較研究は増えていくものと予想される。
3.2. 社会ネットワーク分析
社会ネットワーク分析は、社会学の中でも、人と人を結ぶ関係に着目し、関係構造であるネットワークを分析することでコミュニティ全体の特性を明らかにする学問分野である。社会ネットワーク分析を行うためには、計量可能な形でネットワークを記述する必要があるが、個人間の関係は非明示的であることから、従来の研究ではアンケート調査等によってネットワークを把握していた。この方法ではコストの問題から大規模なネットワークを扱うことが難しかったが、インターネット上では容易に社会ネットワークを得ることができるため、急速に研究が発展している。社会ネットワークの例として、mixiの参加者によるネットワークの一部を図2に示す※。
※社会ネットワークの可視化には「mixiGraph」を利用した。
SNSが出現する以前にも、メールやコミュニティサイトを対象とした社会ネットワーク分析研究は多数存在しており、この時点で方法論はある程度確立されている。これについてはWellmanの論文[3]にて詳しく議論されている。
基本的には、各ノード(参加者)について中心性と呼ばれる指標群を計算し、その結果を用いてノードの評価やクラスタリング等の処理を行う。中心性には、ノードの持つリンクの数(次数)、任意のノードとの平均距離(近接性)、任意の2ノード間の最短経路に含まれる割合(媒介性)、固有ベクトルの値等がある。他にも、ネットワークの密度を計測する指標として、あるノードと接続されたノード同士がどの程度接続されているかを見るクラスタリング係数等がある。なお、ネットワークの分析に際してどの中心性・指標を重視するかは、分析の対象および内容によって異なる。
こういった指標を利用した分析の例として、安田らは数年間に渡って人工知能学会関係者のネットワーク(取得方法は後述)を分析し、ある年度における各研究者の媒介性が、次年度の共著論文の数と相関するといった知見を示している[4]。この知見は因果関係としては採用できないが、研究コミュニティにおける研究トピックの推移を俯瞰するための手段として有用であると思われる。
SNSの分析としては、このように具体的な内容に踏み込んだ研究はまだ見られないが、いくつかの構造分析がなされている。森らは、2005年2月時点のmixiの全参加者36万人に対して中心性を用いたクラスタ分析を行い、参加者を3つのグループに分類した。また、松尾らは同じデータについて知人数の上位200名のみで構成されたネットワークを分析し、どのノードも孤立することなしに1つのネットワークに集約されることを示した。これらの結果より、多数のリンクを持つノードのグループ同士が密接につながっていることが確認された※。
※森ら、松尾らの研究は、株式会社ミクシィより個人情報を特定できない形で提供されたデータに基づく。各研究グループの成果は社会情報学フェア2005にて発表された。
この現象は、大規模な複雑ネットワークにおいて普遍的に観察されるスケールフリー性およびスモールワールド性を示している。スケールフリー性とは、ネットワークを構成するリンクの大部分が少数のノードに接続され、大多数のノードにはごく少数のリンクしか存在しないような状態を指す。このようなネットワークについて、図3のようにノードとリンクの関係をプロットすると、規模に関わらず同様のべき乗分布を示すため、スケールフリーと呼ばれている。一方、スモールワールド性とは、ネットワークの規模に比して任意の2ノード間の距離が短くなるような性質のことであり、これを満たすためにはランダムネットワーク(ノード間の関係に法則性がないネットワーク)と比較してクラスタリング係数が高い必要がある。
これらの知見より、SNSはランダムネットワークではなく、知人同士が密接につながった小規模なコミュニティが、リンク数の多いノード(ハブ)によって大域的に連結された構造であると予想される。
スケールフリー構造を持つ大規模複雑ネットワークがどのように形成されるかについては、Barabasiらが優先選択モデルを提案している[5]。これは、新たなノードが生成された場合に、そのノードがすでに存在するノードに対してリンク数に応じた確率に基づいてリンクを張るというモデルであるが、SNSにおいては、ネットワークは実世界の人間関係の転写という一面があるために、このような優先選択モデルをそのまま採用することはできない。湯田らは、mixiに対する大規模ネットワーク分析を行い、純粋なスケールフリー構造とは一部異なる構造が観察されると指摘している※。このような差異を作り出すネットワーク形成モデルについてはさらなる研究が必要である。
※社会情報学フェア2005より
3.3. 情報・知識共有
SNSに対する情報・知識共有の立場からの興味としては、システム上で流通する情報のアクセスコントロールがある。グループウェア等の情報共有システムは、単一の組織内で運用されるものであるため、システム管理者がアクセス権を制御することができる。しかしながら、SNSにおける知人関係は単一の組織を超えて構築されるのが普通であり、それらをトップダウンに管理することはできない。各参加者は自身で情報管理を行う必要があるが、日常的な情報交換にあたってそのような管理を綿密に行うのは現実的でない。そのため、多くのSNSにおいては、アクセス権限を、直接の知人関係のみ、間接的な知人関係、SNSの参加者全員のように、ホップ数に基づく段階的な設定のみを提供している。しかしながら、この方法では、複数のコミュニティにまたがる情報公開を余儀なくされるため、適切であるとは言えない。
このような問題に対して、Yahoo!のSNSである「Yahoo! Days」などでは、知人関係をコミュニティごとに分類し、情報のアクセス権をコミュニティ単位で付与する機能を提供している。ただし、この方法であっても、コミュニティとして明確に区分できないような範囲に対して情報を発信する場合の作業負荷は大きくならざるを得ない。また、コミュニティを中心としたアクセスコントロールにおいては、コミュニティの参加者が時系列的に変化する場合に、新たな参加者に過去のコンテンツへのアクセス権を付与してよいかといった問題もある。
これについては、コミュニティをあらかじめ定義するのではなく、情報へのアクセス時に現状のネットワーク構造を動的に分析し、その結果を用いて制御を行う手法が模索されている。前節で述べたように、大規模な社会ネットワーク分析手法が整備されつつあり、これらを用いることによって実用的なアクセスコントロールが可能になると期待される。
3.4. 研究者のSNS
SNSに関する研究は、多大なデータを必要とすることから、実サービスの運営者と連携して進められることが多い。その一方で、研究者自らがコミュニティ支援システムを構築し、運用している例もある。人工知能学会大会支援ワーキンググループでは、2003年度より人工知能学会全国大会の論文著者および参加者を対象としたWeb情報支援サービス「Polyphonet Conference」を提供している。Polyphonet ConferenceにはSNS機能が含まれ、研究者のネットワークに関するデータの収集および分析を行っている。図4にスナップショットを示す。
Polyphonet Conferenceでは、一般的なSNSと同様に、参加者ごとのページが用意され、他の参加者と相互にリンクすることでネットワークを拡張していく。しかしながら、論文著者・参加者の全員がシステムを利用するとは限らないため、このようなネットワークによってコミュニティの構造を正確に表現することは難しい。そこで、Matsuoらは、Web全体を情報源としてネットワークを抽出する手法を適用している[6]。この手法では、あらかじめ用意された人名(ここでは論文著者・参加者)のセットから、任意の2名について人名が共起するWebページを検索し、その数から関係の強さの判定およびネットワークの構築を行う。また、得られたWebページの内容を分析することで、関係の種類(共著関係・同じ研究室に所属している関係など)を判別し、ラベル付けを行っている。
Polyphonet Conferenceに格納されたネットワーク情報は、さまざまな方法で検索することが可能である。図5に示すように、自身を出発点として、他の研究者との間にどのような知人関係が存在するかや、ある研究者を取り巻く複数の研究コミュニティを概観することができる。
また、Polyphonet Conferenceでは、各研究者の活動内容をWeb情報を用いて推定することや、知人との関係を明示的に記述するタグ機能、協調フィルタリングによる聴講スケジュールの推薦など、社会関係を利用したアプリケーションを多数提供している。
4. SNSのオープン化とメタデータ
これまでに取り上げてきたSNSは、そのほとんどが中央集権型のアーキテクチャになっている。これは、一定レベルのプライバシーの保護や、意図しない情報公開の抑止に役立っている。その一方で、SNSではブログで見られるようなデータの互換性については全く考慮されていないため、複数のSNSへの参加や活動は非常に面倒である。
先に述べたように、SNSは個人的なコミュニケーションのツールとしてだけではなく、幅広い利用が可能である。用途によっては知人関係を公開することは問題ではない場合もあり、そのような用途に対してオープンなSNSを構築するための基盤が構築されつつある。
代表的な例として、知人関係をメタデータとして記述するためのFOAF(Friend of a friend)がある。FOAFは、RSS 1.0と同じくRDF(Resource Description Framework)の応用例として提案されおり、自身に関する記述および知人との関係に関する記述が可能になっている。一部のブログでは、プロフィールと知人のサイトへのリンクを表現する手段としてFOAFが利用されている。
その他には、XHTMLに埋め込むためのメタデータであるmicroformatsのプロジェクトとして、知人関係を表現するXFN(XHTML Friend Network)がある。XFNでは、ハイパーリンク(Aタグ)のrel属性として"friend"や"met"などの関係を記述する。microformatsを認識する一部の検索エンジンでは、XFNで表現されたコンテンツ間の関係を可視化することができる。
知人関係には多様性があるが、これをメタデータでどのように表現するかは議論の余地がある。FOAFでは"knows"の1種類に限定しているが、XFNでは18種類の属性が定義されている。さらに詳細は関係を表現するためには、知人関係についてのオントロジーが必要になると思われる。
特定のコミュニティサービスのアカウント情報を他のサービスでも利用可能にすることで、汎用化を目指す方向性もある。ブログサービス等を提供している「はてな」では、アカウント情報を図6のようにRDFを用いて記述するフォーマットを提供し、他のブログサービスを利用するユーザに対しても「はてな」が提供する少額決済サービスを利用できるようにしている。
SNSは、その本質からして究極的には各個人が自身の情報を管理し、知人とはP2Pによる通信を行うようなアーキテクチャであることが望ましい。「imeem!」や「Affelio」は、個人がサーバを設置し、サーバ間通信によって情報交換を行うSNSを提供している。
複数のサービスを透過的に利用するという意味では、認証の統一化、シングルサインオン技術が重要である。シングルサインオンは、グリッドなどさまざまな分野で研究が進められているが、Webサービスに特化した活動としては「OpenID」や、ブログのコメントを認証するための「TypeKey」がある。
5. SNSの課題・展望
5.1. 情報の信頼性
SNS上で流通する情報は、その情報源である個人間の関係、あるいはコミュニケーション過程が明示化されることよって信頼性が高いものであるとされている。しかしながら、このような信頼性は、最終的にはシステムを利用する個人の判断に帰着するものであり、何らかの技術が担保するものではない。そのため、SNSはチェーンメールやデマなど、悪意のある情報操作に弱いという一面がある。あるSNSでは、個人情報に関するシステムの脆弱性が発見され、即座に対策がなされたものの、脆弱性に関する情報が参加者の日記を通じて数万人に広まるといった現象が起こっている。典型的な伝播のパターンとしては、知人の日記からこの問題を知り、より詳細な情報を得るために検索を行うと、同じような情報が多数存在するために問題の信憑性が高まり、他の知人へ伝えようとする。大規模なSNSにおいては、このプロセスが数回繰り返されるだけでも広範囲な影響を与えることになる。
また、SNSは容易に情報を発信できるため、自らが過剰な情報公開を行ってしまう例も見られる。とくに、未成年などコンピュータのリテラシーが十分でない層にその傾向が強く、犯罪を誘発しやすい状況になっている。大部分のSNSでは参加者の年齢制限をかけることによりこの問題を回避しようとしているが、実効的に機能しているとはいえない。
これらは情報を扱ううえでの本質的な問題であり、SNSに限定されるものではない。しかしながら、SNSの普及速度に対して問題の周知が遅れているため、さまざまな事象が起こっている。今後は、長期的な視野に立った情報リテラシー普及などが求められる。
技術的観点から情報の信頼性を扱う研究分野としては、セマンティックWebが挙げられる[7]。セマンティックWebは、論理に基づいて記述されたコンテンツや意味体系を整備し、エージェントがそれらを処理することで適切な情報収集を提供する。セマンティックWebにおいても、情報そのものの信頼性を完全に担保することはできないが、電子署名との組み合わせなどによって信頼性の阻害要因を除去するという方向性はSNSにも適用することが可能であると思われる。
5.2. コミュニケーションツールから情報流通の基盤へ
2章でも述べた通り、SNSはコミュニケーションツールの一形態として登場した。個人間の関係の明示化とコミュニケーションは極めて親和性が高く、参加者にとって受け入れやすいものであったため、急速な普及につながったと考えられる。一方、SNSの普及は、基盤となる社会ネットワークの有用性に目を向けさせることにつながった。社会ネットワークとコミュニケーションは分離可能であり、コミュニケーションとは異なる社会ネットワークの利用方法がさまざまな分野で提案されている。広告やマーケティングの分野では、パーソナライゼーションの一環としてSNSの利用が模索されているほか、情報検索や推薦、組織内の人事評価など、対象および利用目的は多岐に渡る。
将来的には、4章で述べたような認証基盤上に各種サービスが構築され、ユーザが自由に必要な機能を選択するオープンなSNSが普及するものと思われる。
情報流通基盤としてのSNSでは、これまで以上に多様なデータが取り扱われることになる。これにともなって、SNSを対象とした研究も高度化すると考えられる。社会ネットワーク分析の分野では、同じ個人が形成する、ドメインに応じた多層のネットワークの分析が注目されている。また、数千万人単位のネットワークを分析するにあたっては、計算量の問題を解決しなければならない。今後は、実サービスを運用する企業と研究者の密な連携によって、SNSの可能性を追究することが望ましい。
参考文献
[1] 武田英明, 大向一輝: Weblogの現在と展望:セマンティックWebおよびソーシャルネットワーキングの基盤として. 情報処理, Vol.45, No.6, pp.586-593, 2004.
[2] 川浦康至, 坂田正樹, 松田光恵: ソーシャルネットワーキング・サービスの利用に関する調査:mixiユーザの意識と行動. コミュニケーション科学, Vol.18, pp.91-110, 2005.
[3] Wellman, B.: Computer Networks As Social Networks. Science, Vol.293, pp.2031-2034, 2001.
[4] 安田雪: 人脈づくりの科学. 日本経済新聞社, 2004.
[5] Barabasi, A.: Linked: The New Science of Networks. Perseus Books Group, 2002.
[6] Matsuo, Y., Mori, J., Hamasaki, M., Ishida, K., Nishimura, T., Takeda, H., Hasida, K. and Ishizuka, M.: POLYPHONET: An Advanced Social Network Extraction System. Proceedings of the Sixteenth International World Wide Web Conference (WWW2006), 2006.
[7] Berners-Lee, T., Hendler, J. and Lassila, O.: The Semantic Web. Scientific American, 2000.
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本論文は非公式バージョンです。学術論文へ引用される場合には、必ず「情報処理」2006年9月号掲載の論文をご参照ください。(大向一輝:
SNSの現在と展望 -コミュニケーションツールから情報流通の基盤へ-, 情報処理, Vol.47, No.9, pp.993-1000,
2006.)
Comments
OpenPNEの紹介があっても良かったのでは?